細谷雄一教授の世界観

Xより 2025/3/7

 

細谷雄一教授の意見が興味深かったのでコメントを付けた。

 

1.私が外交に関して基本的に大切にしている理念は、カリエール、アーネスト・サトウ、ハロルド・ニコルソンが論じた系譜であり、「誠実」や「信頼」を基調として、さらには吉田茂が『回想十年』で論じた「国際正義」を擁護した立場です。吉田は、次のように記しています。

 

2.「国際信用に関連して重要なことは、正義に則って外交を行うということである。外交が自国の利益を直接対象とするのは、いうまでもないが、同じ自国の利益といっても、目先の利益と、長い先々までを見通した利益がある。」さらに次のように述べています。

 

3.「徒に目先の国際情勢の変転に一喜一憂して、国の外交を二、三にするのは、愚かなことである。正をとって動かざる大丈夫の態度こそ、外交を行うものの堅持すべきところであろう。」経済成長や対米同盟を優先し、「吉田路線」や「吉田ドクトリン」で知られる彼の外交は、実は「国際正義」が基調。

「コメント」

建前としては誰でもそういう立派なことを言いますね。


4.ですので、ウクライナ戦争についても、開戦当初から基本的立場は同じです。国際法の根幹を破壊して、国際社会の平和と安定の維持に特別の責任(と特別な特権)を有する国連安保理常任理事国のロシアが、国連加盟国の隣国を侵攻し、領土を併合することを許してはいけない。これだけです。

「コメント」

1 国連安保常任理事国アメリカが国連加盟国のイラクを侵攻したのは許せるのか?

 イスラエル国際法違反をアメリカが国連で拒否権を使って擁護し、

 アメリカ以外の西側が援助・黙認するのはいいのか?

 

5.そして、それを基礎として、主権国家であるウクライナの運命は、自決権に基づいてウクライナ国民が決めることであり、ポーランド分割のように大国が中小国の領土を意のままに分割してはならないということです。それが国連憲章の精神の根幹です。それが揺らげば、国際秩序全体が崩れていく。

「コメント」

大国が中小国を分割すると国際秩序が本当に崩れるのか?

 

6.それぞれの専門家が、それぞれの立場から、自らの見解を論じることが重要と考えます。私の場合は、ヨーロッパ外交史の研究の立場から、過去数百年の歴史を紐解けば、大国の野望や利己心から、共有されていた原則や価値の根幹が崩れたときに、世界戦争に至ります。今はその瀬戸際にある。

「コメント」

1.過去数百年というのが曖昧。いつからいつまでか?

2.「共有されていた原則や価値観の根底が崩れると世界戦争になる」というが

 過去数百年での大戦争第一次大戦と第二次大戦しかない。

 この2つの戦争は「共有されていた原則や価値観の根底が崩れて世界戦争になった」

 のか? 

 

7.ウクライナ政府の腐敗や、戦争の原因としてのNATOの東方拡大の問題性や、ゼレンスキー政権を維持するべきかという問題など、重要だとは思いますが、私の議論の根幹には位置しません。日本は戦争の反省から、戦後「国際正義」を擁護してきた。国際秩序、そして国際正義を維持し、世界戦争を避ける。
「コメント」

・実際に国際社会は「国際正義」など建前に過ぎない、

イラク戦争、チリのアジェンダ政権打倒してピノチェト支持、

自由も民主主義もないサウジ支援、イランイラク戦争の頃のフセイン支持

イランのパーレビ支持、アメリカは必要に応じて権威主義体制を利用してきた。

「国際正義」など実態はない。建前に基づいて擁護するというのはナンセンス。

プラトンの『国家』のトラシュマコスの議論でも読み返したらどうか。

「プラトン 国家 正義 トラシュマコス」

 

8.これが、私がこの問題を論じるにあたって、開戦から一貫して重要だと考えてきたことです。なお、外交におけるそのような私の基本的な考え方は、2006年に刊行した『外交』(有斐閣)の終章で書いているのですが、残念ながらこちらは版がきれて購入ができないようです。改訂して復刊することを志したいと思います。