「結論」
クリントン政権でのサマーズと、オバマ政権でのサマーズは経済に関する考えは 「大きな政府」「規制必要論」へ、人当たりも良くなったし、謙虚さが加わった。
「クリントン時代」
・サマーズはクリントン政権では「市場の自由」を重視
・クリントン政権の商品先物取引委員会委員長だったブルックスリー・ボーンはデリバティブ規制を主張したが、その数日後にサマーズは電話で怒鳴りつけたらしい。
・ハーバードの学長に就任してからも、その強引なやり方が教授会の反発を買い、 06年には失言で辞任に追い込まれた。
・アラン・ブラインダー「サマーズは非常に頭がよく、それをひけらかす男だ。論争では彼にかなわず、自由化慎重論の私は引き下がらざるを得なかった」
・クリントン政権でのサマーズは、かつてディベートの全米チャンピオンとして鳴らしたように、大物議員の要求も地面に落ちた枯れ葉のように踏みつけた。
・90年代、サマーズとスティグリッツは犬猿の仲だった。スティグリッツは世界の資金の流れをもっと規制したいと考えたが、サマーズは「ルービン、サマーズ、グリーンスパン」流の自由市場論で対抗し「気に入らない意見は無視」したという。
・人の意見に耳を貸さない自信家と言われるが、本人によれば人の話はちゃんと聞いているそうだ。ただ、ついつい退屈そうな顔やイライラした表情を浮かべてしまうから、傲慢な印象を与えやすい。また無神経な人間と思われやすい。
「オバマ時代」
・オバマ政権では自動車産業救済などで「大きな政府路線」に変わった。
・議会に対して政府の景気刺激策を売り込むときにも熟練した政治家として振る舞った。ときに筋違いな主張もする議員たちの声に、辛抱強く耳を傾けた。
「彼は話を聞いてくれる。ほかの政権幹部よりいい」と、上院財政委員会を率いるマックス・ボーカスは言う。「よく我慢して、すべての質問に答えていた」。
・「サマーズはよく『これとこれに関しては83%自信がある......』といったように、物事への確信の度合いをパーセントで表す。
・「今は現実の事態に基づいて、経済学の理論を大きく書き換えていく必要がある」この1年で金融規制強化主義者へと変身した。政権入りする直前、フィナンシャル・タイムズに寄稿した最後のコラムには「市場の行きすぎやまちがいを補うために、今こそ政府の関与を強めるべきだ」と記している。
・「決して謙虚なタイプとは言えないが、意見を言うとき『まちがっているかもしれないが』と前置きするようになった。経済政策についても、この困難な状況では誰にでもまちがいはあると感じているようだ。昔の彼ならありえない」経済諮問委員会クリスティーナ・ローマー委員長は言う。
・以前より他人の意見を聞き、他人とうまくつき合うすべを身につけた兆しはある。
・オバマ政権は市場の期待にもっとうまく対処できたのではないかと突っ込まれてもあえて反論はしなかった
・オバマ政権では「聞き役に回ることが多く、『自分にもすべての答えがあるわけじゃない』と言えるようになった」。
・傲慢な態度にも変化が見える。「年を取れば、人間は誰だって少しは丸くなるものだ」とサマーズ。謙虚になったのは「事態が深刻すぎて、誰にも確かなことがわからないせいかもしれない」とも言う。
「なぜ変わったか」
ケインズの『状況が変われば私は意見を変える。さて、君ならどうするかね』という言葉を引用し、自分の考えの変化を説明した。