人はなぜ考えを変えにくいか
「総論」
誰でも他人の頑固さや偏狭さに苛立つことがあるだろう。それは人間一般が持つ性質であるので論じてみたい。(他人が頑固で偏狭であるように、たぶん自分もそうなのだ)
ここでは、考えを変えることの難しさ、自分の考えをどう変えるかを考える。
(他人の考えをどう変えるかはいずれ論じる)
「結論」
人は一度考えを持ってしまうと、明白な事実やデータを前にしても考えを変えない可能性が高い。しかし工夫すれば変えることも可能だ。
「考えを変えにくいということに事例(1)情報収集」
・地球温暖化に懐疑的な人は
・温暖化の危険を主張する情報を避けやすい。
・温暖化に懐疑的な主張をする情報を積極的に集めやすい。
「考えを変えにくいということの事例(2)解釈」
・死刑賛成派に死刑賛成の論拠となる資料を読ませる →高く評価する
・死刑賛成派に死刑反対の論拠となる資料を読ませる →低く評価する
・死刑反対派に死刑賛成の論拠となる資料を読ませる →低く評価する
・死刑反対派に死刑反対の論拠となる資料を読ませる →高く評価する
つまり、自分の意見に都合の良い外部の情報を高く評価し、
都合の悪い外部の情報を低く評価する。
「考えを変えにくいということの事例(3)ブーメラン効果」
意見を否定される情報に遭遇すると、どんどん反論を思いつき、更に頑なになる。
「数理的能力、知能が高い人は考えを改めやすいか?」
いいえ。普通の人より知能の高い人のほうが考えを変えにくい傾向がある。
数理的能力、知能が高い人は
・自己正当化が上手である。
・他責化、責任転嫁が上手である。
したがって、
何かあっても上手に言い訳、責任転嫁し、自己正当化しやすい。
・自分の考えを守るのが上手である。
・自分に都合の悪い考えをはねつけたり、批判するのが上手である。
したがって、
間違っていても自分の考えを変えにくい。
「数理的能力、知能が高い人が正しく判断しやすい場合は?」
テーマに思い入れはなく、中立的な場合は、正しい判断ができる場合が多い。
「考えを変えにくくなる原因」
1.確証バイアス
確証バイアスは3つの場面で働く
1.「情報収集」
・自分に都合の良い情報を集める
・自分に都合の悪い情報は無視する
2.「解釈」
・自分に都合の良い情報を高く評価する
・自分に都合の悪い情報を低く評価する
3.「記憶」
・自分に都合の良い情報をよく覚えている
・自分に都合の悪い情報はあまり覚えていない
2.認知的不協和
自分にとって都合の悪い情報を見ると自我、自尊心が脅かされ認知的不協和という状態になる。それを回避するために都合の悪い情報を避けたり、都合の悪い情報を自分に都合よく解釈する。これにより認知的不協和を軽くしようとする。その結果、考えが変わりにくくなる。
3.自信過剰バイアス
人が自分の知識、判断、能力を過大評価する認知バイアス。特に、自分の正しさを過信し、現実と乖離していることに気づきにくくなる。また自分の知識、考えを過大評価し、新しく学び、知識を深めることに無関心になる。
4.望ましさバイアス
自分や社会にとって望ましい結果などが実現すると思い込むバイアス。
5.盲点バイアス
バイアスの影響を受けているにも関わらず、バイアスの影響を受けていないと思うこむバイアス。これによって自分のバイアスに無自覚になり、より強くバイアスの影響を受ける。
「どんな時に考えを変えるか」
・自分の世界観に合った新情報を得た場合は考えを変えやすい
・自分の世界観に合わない新情報を得た場合は考えを変えにくい
「どうすれば積極的に自分の考えを変えられるか?」
・確証バイアス、認知不協和、自信過剰バイアス、盲点バイアスなどを知り、
自分がバイアスまみれであることを認める。
・自分の考えや知識に限界があることを認める。
・過去の知識や考えは更新されたように、自分の知識や考えも更新されると考える。
・誰もが間違うのは当たり前で、大切なのは間違いを修正することだと考える。
・考えを適度に変えたほうが、正しい答えにたどり着く可能性が高いと考える。
・自分の間違いを見つけて修正するたびに、正しい知識が増えたと考える。
・自分の考えも他人の考えも、今後更新される可能性のある仮説だと考える。
・自分の考えを書き出し、その反証事例を探す。
・考えるとき「この考えが間違っているといえる条件はなにか?」と考える。
「参考」
『THINK AGAIN 発想を変える、思い込みを手放す』アダム・グラント